店長Q&Aブログ4【美印工房】

流印体は太字と細字のどちらがよいですか

2018-01-15追加

お尋ねの流印体に限らず、優印体と星印体以外のすべて書体において、太字・細字の2パターンをご用意しております。

文字と円枠とは対比の関係にあるので、太字の場合は円枠を細く、細字の場合は円枠を太くします。

太字で円枠を太くしてしまうと、全体的にボッテリとしたイメージになりますし、また細字で円枠まで細くすると、なんとなく貧弱で頼りなげな印象を与えます。

つまり、円枠を細くすることで文字の太さを、逆に円枠を太くすることで文字の細さを、それぞれ、よりいっそう際立たせているわけです。
これが文字と円枠の対比の関係です。

さて、そこで太字にすべきか細字すべきかというご相談ですが、これからご説明申し上げる2点についてご承知いただければ、お好みでお選びいただいて何ら問題ございません。

その、ある2点とは何か。
まず1点は「印鑑の落下・衝突による円枠の欠損リスク」です。

■印鑑ケースを垂直に立てて開ける
■捺印後即ケースにしまわず机上に出しておく

そんなちょっと不注意で印鑑を床に落としてしまう。
その床が運悪く硬い素材でできていれば…、
不運にも印鑑の枠が欠けてしまったとしても、後の祭りとなります。

枠が太く、なおかつ水牛や象牙といった硬質印材であれば、万が一の落下・衝突による枠の欠損リスクは低くなります。

しかしこれはあくまで「起こりうるリスク」であって、必ずしも落下=欠損発生というわけではありません。

■印鑑ケースは水平にして開けて、注意深く取り出す
■印鑑はしっかりと持って朱肉吸着→捺印
■捺印終了後は速やかにケースに収納、ケースは水平にして閉じる

このような注意深い捺印行動を取っていただければ、落下・衝突のリスクはほぼ100%回避できるでしょう。

ちなみに美印工房では、そうした万が一の外枠欠損に備えて「彫刻5年間保証」をお付けしています。
しかしその場合も再彫刻した印鑑を新たに役所・銀行などに「改印届け」するという手間が発生します。

残る1点。
多くの開運印鑑ネット通販に載っているのは極太文字の印鑑ばかり。
そのような印鑑を見慣れている方にとって細い文字の印鑑は「貧弱」に映るかもしれません。

しかし、ここには大きな錯覚が潜んでいます。

太字の印鑑は「文字を太く彫り出す」のではなく「文字を太く残した」結果です。

「文字を太く残す」ということは、逆に言えば「文字以外の部分を少しだけ彫る」ということに他なりません。

一方、細字の印鑑は「文字以外の部分をたくさん彫り、ギリギリまで細心の注意を払って細い文字を彫り残す」という、 高度な技術と緊張の持続を強いられる繊細な彫刻作業によって、ようやく完成に至ります。

もし印鑑職人だったら、どちらを好みますか?
趣味ではなく、仕事として考えたとき、太字と細字、どちらの印鑑を彫った方が楽で効率的か、もうおわかりですね。

美印工房の印鑑は、太字とはいえ、他店のそれと比べるとかなり細身です。
それは、ボッテリとした太い線を彫り残すことを良しとしていないからです。

(密印体太字は「文字以外の部分を少し彫る」ことで成立していますが、こちらは逆に、文字以外の彫るべき部分が極端に狭いため、その限られたスペースだけを確実に彫り進めていくのにも、精緻な技術が要求されます)

長々と書いてしまいましたが、要は「ギリギリの細い線を彫り残す細字の方が、太字に比べてかなりの技術と労力を要する」ということです。

以上2点をお心にお留め置きいただいた上で、あくまでもお好みの書体をお選びいただきたく存じます。

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